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AVGレビュー > フリーAVG > cubic3

作者サイト名:グロビュール
作者サイトURL:http://www.globule.info/

―ノベルゲームの可能性を広げた前衛作品―

 弟切草を開祖として、ノベルゲームが生まれてすでに15年が経っている。この間、文字で読ませるという基本的な スタンスには何の変わりもない。ノベルゲームはゲームではないと言う人も多いが、このような意見が出るのも、 読むだけの作品はシステム的に仕掛けを施しにくく、きわめて進化性に乏しいからでは。15年でグラフィック、 演出に関しては目まぐるしい進歩を遂げてきたのだが、もはやノベルゲームの発展は限界に来ていると思われた (例外として「ひぐらしのなく頃に」の、一度に答えを出さずプレイヤーに推理してもらうという手法は、とても 画期的だった)。

 そこで現れたのがcubic3というノベルゲーム。真っ暗な場所で、記憶を失った状態で目覚めた「僕」がプレイヤーに 語りかけるようにしてテキストが進む。暗闇の中で出会った「そいつ」と周囲についての怪奇を淡々と語るという、 それだけの流れだ。しかし、選択肢により時系列と語り手が変化するというのが、これまでのノベルゲームに なかった仕掛け。サイトから引用すると「あのとき、僕とそいつは、何をしたのか。そして僕は、その話を誰に、いつ 話しているのか」。プレイヤーはこれをパズルのように当てはめながら、その難しさに頭をクラクラさせながら、結末 まで導かれる。

 時系列や語り手をバラバラにして最後にピタリとすべてを収束させる作品は、小説ならば上遠野浩平の「ブギー ポップは笑わない」などがあるが、これは本だから表紙からプロローグまで通しで読むという決まりには逆らえない。 しかしcubic3の場合、選択肢が設置されてあるためにどこから最初に読むべきという決まりすらなく、言わば 道しるべの存在しないテキストの迷路である。しかも語り手が変わるのに語り口が変わらないのが困難に拍車を かけている(これはプレイヤーに作品世界を容易に理解させないために意図的にやっていることだろう)。とにかく 複雑で読解が難しく、最終エンディングを迎えてもわからない人が多いと思う(筆者自身最初そうだった)。だが いったん理解出来れば、その計算しつくされた物語の絡み合いの感触に、妙な心地よさを覚える。

 ストーリー自体はそう大層でもなく(トンデモ系?)、驚くような感動に満ちているわけではない。はっきり言って 万人に受けるタイプの作品でもない。しかし本作が示した手法は、間違いなく斬新。このシステムで長編を作ったら、 とてつもない傑作が生まれそうな気がする。
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