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AVGレビュー > フリーAVG > 鴉の断音符 作者サイト名:飼育小屋製作委員会作者サイトURL:http://fox.boy.jp/ ―鴉視点のクールなノベル― 夏目漱石の「吾輩は猫である」に代表される、人間以外の存在が人間社会を観察する物語というものは、視点の 性質の違いにより、自然と他とは一味違う読後感を提供してくれるものだ。鴉の断音符は一言で言えばそのような 作品となっている。主人公ははぐれ鴉の「ヤタ」。遺伝研究の場から脱走した、人間並みに賢い鴉という設定。「そんなのありえない」 とかは言わないでおこう。人間に強く興味を惹かれる彼はある日殺人現場を目撃する。それからその殺人事件を 中心にヤタは人間社会を眺めていく。このヤタというキャラクターはとてもダンディだ。殺人事件の被害者の 死体を見て「人肉は美味いか否か」と真面目に考える場面には痺れた。文章全体にも一貫したクールさが現れていて、 しかも無駄がない。滞りなく読ませてくれる。 ヤタの中には研究所で飼われていた頃に生まれた、人間に近いもうひとつの心がある。それはすなわちプレイヤーで あり、ヤタは「相棒よ、行き先を示せ。自分はそれに従う」と画面のこちら側に語りかけてくる。これは人間 主人公ではできない手法だろう。そうしてヤタは1日の初めに行き先を選択することで様々な人間たちを観察して いく。一応メインとなるのは殺人事件だが、これをまったく無視して行動することもできる。普通のミステリでこんな ことをすると筋がぶれることになってしまうが、もともと本作のテーマは「自由」。スタッカート・シナリオと名づけられた 小エピソードの連なりは、ヤタとプレイヤーのこの上ない「自由」を形作っている。この主人公とプレイヤーの見事な リンクがあるからこそ、どんなエンディングに辿り着こうとも不自然さはない(一部ギャグエンディングもあるが、 問題にはならないだろう)。 エンディング数が多く、しかもなかなか難易度が高くコンプリートには苦労する。簡単なノベルゲームに飽きている 人にもお勧めだ。第1回ふりーむ!ゲームコンテストにてノベル部門賞を獲得したことからも、そのクオリティは 保障されている。 ●トップページへ |