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AVGレビュー > シェアAVG > 彼岸ノ此岸

作者サイト名:nuko
作者サイトURL:http://nuko.web.infoseek.co.jp/

―夢と現実の境界をまたいで―

 他とは一味違う青春群像劇を描くnukoのサークル第3作。今回はファンタジー世界を活用してのストーリー展開が 試みられており、ひときわ強い独自路線を打ち出している。そして今回もレビューも難しかった。少々ネタバレに なるがご容赦いただきたい。

 目を覚ますと主人公は不思議な世界にいた。記憶どころか名前さえも忘却しており、さっぱり状況が掴めない。 そして発見した建物の中では、自分と同じ境遇の男女が集まっていた……。天に高く地に深くと類似した図式の 中で、未知の世界と失われた自分を追求する。前作は複数主人公という構成で、しょっちゅう視点も変わったが、 今回はほぼ一貫して主人公の少年の視点だ。前作と同様、とても静かにゆるやかに進行するが、読みやすさは アップしているという印象。

 最初は仲間と打ち解け、それなりに楽しい時間を過ごしているように見えるが、次第に主人公たちの中で複雑な 感情が募っていく。自分は誰で、かつて何をしていたのか。1日の始まりごとに見る夢によってそれらが断片的に 明かされていき、やがて彼らはひとりひとり姿を消していく。この過程の描写が、思春期ならではの静かな焦りに 満ちていて、やはり上手い。そして第2部からは舞台を変更し、第1部の謎が明かされる。夢と現実という、さほど 珍しくもないふたつの世界の設定は、文字通り「現実」との距離を表すためのものだった。克服しがたい寂寞感を 抱き半ば現実を諦めている少女を、主人公は夢を通じて覗く。その彼女のために主人公が取った行動は、危うくて 青臭いが、同時に熱さと強さがある。この直線的な感情のほとばしりこそが青春だ。

 娯楽性があまりないのは、前作と変わらない。だが書き手の個性をそのまま維持しつつ、よりスタイリッシュに 整えられている。普遍的な「自己の存在と居場所」というテーマに対して、非常に現代的なアプローチだと思った。 プレイ時間は15時間以上と長いので、腰を据えて読もう。
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